妊娠発覚から中絶まで

想定外の妊娠から、中絶手術までの手記。同じことは繰り返さないと強く決めた。避妊を軽く考えている人達にも読んで欲しい。

最後に

はじめはなんとかなるか、ぐらいの気持ちでしか無かったものの、
日々体調に変化が表れる度に、自分が苦しくても子どもが生きている間は負担をかけないようにしようと思う気持ちがあった。
職場で具合が悪くても理由も言えず、男の上司にきついことを言われたこともあった。
忙しい恋人に、辛いときに寄り添って貰えない悲しさもあった。
小さな一人の人間のチャンスを潰した。

だからこそちゃんと水子供養も二人で続けたいと思うし、
自分のように妊娠を軽く考えてる若い男女にも重く受け止めて欲しいと思う。

今回の決断は間違っていないとは思っている。
次妊娠するとしたら、今の恋人と結婚した末に、まわりに祝福されながらが良いな、と。
二人分愛情を注ぎたいな、と強く思います。

おわり。

手術

時間になりベッドのある部屋に呼ばれる。

精神安定剤を飲まされる。
肌着の上に指定の服を着、横になる。
麻酔、吐き気止めの入った点滴を打たれる。
点滴は人生で初めてだったので、かなり恐怖であった。
眠くなったら寝ていいですよ、と言われたが地味な痛みが気になって眠れなかった。半分妄想の世界にはいた。

点滴を少ししたところで看護師と手術室へ。
テレビでよく見る電球のたくさんある丸いライト、アルコールのにおい、身体につけられる装置など、非現実にただ緊張していた。
しかしこの時意識はあるままだし、膣に入れたスポンジを抜かれるのは痛いし、大丈夫なのかと思った。
そして酸素マスクに気体の麻酔が混ぜられた。
大きく息を吸って、吐いて、無我夢中で吸って、吐いて、吸えなくなる頃には別の世界にいた。

ふわーっと身体から遠ざかる意識、緑の幾何学模様の部屋を回転する感覚、小学生の頃図工が得意で、『図工のマドンナ』と呼ばれていたことを十何年ぶりに思い出したこと、現実とは別のパラレルワールドにいること、でも恋人のことは思い出せること。
幾何学模様の部屋を回転し終わりそうになった頃、意識が戻ってきた。多分まだ早かった。
子宮に圧を感じたり、吸い取る音だったり、吐いてしまったり。
終わるまでが長かった。

「終わりました」

この時痛みは無く、ただ気持ち悪いだけだった。
無意識に泣いてたようで看護師が涙を拭いてくれていた。

このあと着替え、再度診察をし、空になったエコーを見た。さっきまでいたのに。

お会計をした。
明日の予約をした。
薬を貰って帰った。

つわりもなくなって、大きくなることも無くなって、普通の生活に戻れるのに嬉しくなくて、今更だけど、産むことが出来なかったことに対して後悔をした。

中絶の日

中絶前日。
飲食は22時までと言われていたのでギリギリまで食べる。(食い意地が張っている)
明日の準備をして早めに床に就いた。

中絶前日。
車で来ることは禁止されていたので公共交通機関を利用し病院へ。

受付で同意書と費用を渡し診察を待つ。
この日は特に旦那や子供連れが多く、自分にはこの選択が無いことに悲しくもなった。

診察に呼ばれエコーを確認する。
9週でもう人間らしい形にまでなっていた。
先生の、順調に大きくなっていますね、の一言。
そして壁隔てた隣からは流れていますね、の声が聞こえ、申し訳なくなった。何にかは分からないけど、情けなかった。
膣を広げる処置をして待合室で待機することになった。
二時間ほど時間があったので、雑誌を読んだりテレビを見ることにした。
しかしさっきの「順調に大きくなっていますね」という言葉が引っ掛かり、思わず少し泣いてしまった。
そして、隣にいたと思われる人も戻ってきたが、その人もまた泣いていた。長い時間肩を震わせて。
健康な赤ちゃんがここじゃなくてあの人のところに来れば良かったのに。
そう思ってまた少し泣いた。

つわりについて

5週からもうつわりの症状は出ていた。
胃から食道付近のもやもや、
吐きそうで吐かない、
揚げ物とにんにくが食べられない、
市販のそばつゆがくさい、

それでもなんとか仕事も家事もしていた。
恋人との記念日もあったが、気も紛れ1日楽しく過ごせた。
(お腹の子の相手だからなのか、恋人といるときは割りと体調が良かった)

5週後半になると、実際に吐くようになっていた。
食べたばかりのうどんを吐いたり、
朝何も食べなくても歯磨きをしてると胃酸を吐いたり、
会社でも吐いたり。この日は早退もした。
だんだん日々の生活に自信が無くなってきた頃でした。

ただこの時仕事の繁忙期に入ってしまい、通常の休みのスパンが長くなってしまっていた。
朝吐きながら何度仕事に行きたくないと思ったことか。
恋人もまた忙しく、合わないまま7週を迎えた。

この頃は一時的に体調が良く、辛いもの、酸っぱいものだけは食べることができた。
揚げ物を避ける。にんにくを避ける。それだけで毎日楽だった。
中絶の同意書にサインを貰うついでに外食に連れていってもらったが、自分でもびっくりするくらい食べることができた。

8週には歩いて外出もした。ランチセットを食べきったり、カフェでお菓子をたべたり、ファストフードを食べたり、流産…?と疑うくらい元気だった。

しかしこの後から頭痛に悩まされることになった。
中絶するとはいえ生きてる我が子、薬を飲むことを躊躇った。おまけに吐きつわりも復活し、ご飯を抜く日もあった。これは中絶当日朝も続いた。

中絶を決めてから

2回目の病院。

6週のお腹の赤ちゃんは大きくなっていた。
落花生のような、また違った形になっていた。心拍も確認できた。

先生からの説明を受ける。
妊娠初期のため負担の少ない方法で手術することができる。
全身麻酔をする。
手術は半日かかる。1週間は安静に。
術後ホルモン剤で身体を整えて、生理が来たら、そこで検診をして終わり。

また、このころ食べても食べなくても吐くようになっており、苦くて黄色い吐瀉物は何か聞いたところ、胃酸だと言われた。
胃酸が苦いとははじめて知った。

その後看護師と別室に行き、採血をし、手術の日にちを打ち合わせした。

すぐ出来るかと思ったが、3週間後になった。
この苦しみが3週間続くのかと思った。

報告と方向

5週では心拍が確認できないため、産むか中絶するかの確認は無かった。

この日は友人と約束していたため昼から外食に行ったのだが、料理に使われるにんにくの匂いがいつもより気持ち悪く感じてしまい、残してしまった。
その後も立っていることが辛く、喫茶店で柑橘のジュースを飲んでから帰らせて貰った。

週末、恋人に会い、結果を直接打ち明けた。
正直なところ想定外でショックだ。と言われた。
こっちは身体に負担がかかってるのに。苦しい思いをするのは私なのに。

ただ、自身も結婚にはまだ早いと思っていたこと、働きながら一人で育てていく自信が無いこと、それを理由に中絶する方向で決まった。

翌週行った病院で、中絶する旨を伝え、同意書を受け取った。

月経の遅れ

いつもならちゃんとした周期で来ていた月経が来ない。

そう感じて予定から1週間経った日、市販の妊娠検査薬を使用した。

結果は陽性。
でも、なんとなく、なんとかなるだろうと思っていた。


当時私には付き合って半年も経たない恋人がいて、大丈夫だから!と押されて行為中、中に出すことを許してしまっていた。
次の月に問題なく月経が来たため、妊娠って簡単にする訳じゃないんだ、と思い込んでいた。

そんな矢先の出来事だった。

休みの日に病院に行き検査。
アンケートを書かされ、尿検査、内診を行った。
結果、妊娠5週。
目玉のようなものがエコーで写されていた。

写真を持ち帰り、恋人に報告をした。